語りえないことを語る組織になるために ~ペンと問いとストーリー~

グラフィックレコーディング Advent Calendar 2017」23日目の記事です。

今年は、「自分が大切にしたいこと」に共感してくれる人が会社の中に増え、たくさんの種から芽が出た年でした。その芽を、守って、支えて、はぐくんだことの一つが「ペンを持って描くこと」だったと思っています。今回は、私がペンを持ち始めたストーリーも含め、組織の中で芽吹いたことについて書いてみます。


●ペンを持ち始めたきっかけ

会社の中で新人研修の企画と実施を担当していた頃、年々現場の仕事のスピードが速く、複雑化していくことをひしひしと感じ、「私が新人の彼らに渡す学びって、本当にこれでいいんだっけ?」と悩み、たくさんの方に相談にのっていただきました。そんな中、「経験学習」や「対話型組織開発」、「Art of Hosting」と出会い、翌年の新人研修ではそれらをベースにした合宿を導入。その合宿に参画された方が、話された内容を絵や文字を使って模造紙に描いていくことで、「私たちはこの場で何を、どのように学んだのか」をつかむことができ、振り返りがとても促進されると感じました。

合宿後、すぐに私もペンを持ち始め、今年に入ってからは、会社の中に似たような活動をしている/したい人たちと共に、グラフィックカタリスト・ビオトープというTeal的な論理組織を作って活動しています。


●組織の中で働くときに、自分が大切にしたいことって何だろう?

一番初めに思ったことは「自分で自分を大切にし、他者からも大切にされること」でした。いろんなことはあるけれど、私は自分が勤めている会社や、一緒に働く人のことが基本的には好きで。「ご縁のあった方と幸せになりたい」と思い、「そうなるために必要なことはなんだろう」と模索していた時、ナラティヴ・アプローチやストーリーテリングと出会い、それらと経営学をつなげて語る先生とのご縁ができました。

愚痴とかマウンティング大会で終わるのではなく、かといって「ポジティブなことだけを言う」というルールもない状態で、もやもやもふんわりしたことも受けとめられ、もっと自由に語ることができたら、私たちが歩む組織のストーリーは変わっていくんじゃないか。そんな風に思い、いろんな対話の場で描いてきました。今までなら、なかったことにされてしまった可能性のある語りを描き、描かれた内容からまた話す。その場にいた方から「描いてもらえたことで、とても聴いてもらえたと感じた、より話そうと思った」とコメントをもらったことがあり、対話を描くということは「今の組織では語りえないと思っていたことを語る」ための勇気につながることがあるなと感じています。


●Story Activist「Mary Alice」の来日と、共鳴してくれた人たち

社内の中では上記のようなことを地道にやってきましたが、今年の夏に転機が訪れ。ストーリーや問いのパワフルさを世界各地を飛び回りながら伝えているMary Alice(MA)が来日することを知り。彼女はStory Activistであり、Art of HostingのStewardでもあり、グラフィックの世界カンファレンスでワークショップを持ったり、全体企画もしていて。自分がどんなに「語りえないことを語ることが大切、ストーリーが大切、パワフルな問いが大切。そしてそれらを後押しするために、私はグラフィックを使っています」と言っても、「それって論理的に説明できるわけ?」と言われてしまうと、そこで会話が終了してしまい。けれど「論理的に正しいこと」が大切にされすぎていることに違和感を感じていたし、ストーリーは硬直化した関係性や思考に違うインパクトをがあるだろうなという勘はあって。「MAが来日するタイミングで、会社の中で学びの場を作ってもらえたら、自分ではできなかった一歩が踏み出せるんじゃないか」。

そうして、共鳴してくれた人と共に、MAによる学びの場を社内に作りました。タイトルは「これからは、ストーリーでリーダーシップを発揮する ~人が動くパワフルなストーリーを生きるために。私たちらしいストーリーを探求し、語り、つながるワークショップ~」。英語と日本語が入り混じり、その場によりフィットさせるためにワークショップ自体も可変な中、聴いて、描いて、話して。


ワークショップを進める上で、キーワードとなることも描いていきます。


ランドスケープに全体のアジェンダを描いておき、全員で共有中。


Check inの問い3つ。

Check inのホスト(この場の器を創る[ホールドする]人のこと、ファシリテーターとは別の意味で使われます)は私が担当しました。

参加者の方から、「一人の人がずっとこの場をホストするのではなく、ワークごとにホストを変えていくのは新鮮だし、その場をみんなで創っていける可能性が感じられていいね」といったコメントをもらいました。


クエスチョンボード(通常、パーキングロットと呼ばれることが多いです)。

今回は英語と日本語が入り混じるワークショップのため、「英語ができないから質問しづらい…」「こんなこと聞いたら変かな…」という気持ちになりやすいかなと思ったこと、それらをグラフィックのしかけで解決できないかなと思い作りました。


ワークショップを進めていく中で、私たちの組織にとって「Story が Catchできそうなキーワード」を一覧化。「グラフィックなんてどうですか?」と言われて、「そのキーワードで話す人、いないと思いますけど…」と言いつつ書いてみたら、グラフィックをキーワードにストーリを話してくれた人が複数いてびっくり。

「とにかくやってみよう」は一番好きな会社のスローガン(?)です。


ストーリーテリングのワークで利用したもの。Witnessはナラティヴ・アプローチでもとても重要な人として語られます。ここでは「証言者」と訳していますが、「立会人」の方が近いかもと今では思っています。


Silent Self Organizeという方式でポストイットを貼り、

そこから何が見えてくるかを対話しながらグラフィックを追加し、

さらにそこからどんなことを学び取ったかをランドスケープに反映していきます

(反映したのは木の部分)。

その日に描いたランドスケープ

(ワークショップの全体を描くグラフィックのことをこう呼んでいます)

当日の企画メンバー



この日に蒔いた新たな種を芽吹かせ、はぐくむために、3か月後には「Story Camp」という名の場も作り。ワークショップの時に描いたグラフィックを見て振り返りをしたり、新しく来てくれた人とも一緒にストーリーを聴き合ったり、実践した内容をシェアしたり。



●これから

「自分の勘と違和感」「ペンと問いとストーリー」を大切に、自然、社会、会社、組織、コミュニティ、他者、そして自分の感情やニーズとつながること。語りえないことを語れる場をつくること。そういった場が大事だよ、と伝えていくこと。そんなことをしながら、歩んでいこうと思っています。

来年にはどんなストーリーが紡げているのか楽しみにしつつ。

NarratiViz

えがいたら、世界はもっと、変わってく。